助成活動事例「東京農工大学 小瀬亮太氏・髙橋さくら氏」
東京農工大学大学院 小瀬亮太氏
東京農工大学 髙橋さくら氏
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▲都市型植物工場研究施設 ▲研究成果発表時の髙橋氏
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助成テーマ:農林水産業における革新的・先進的技術に関する研究【2023年度】
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研究題目:木材パルプから得られる微細繊維のサイズ・形態評価法の開発
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代表者名:小瀬亮太
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代表者所属:東京農工大学大学院 農学研究院
研究の意義
林産物の一つにパルプ用材があり、林野庁の令和2年度の木材需要動向資料によれば、木材の需要量の35%がパルプ・チップ用材であり、需要項目では一番高い構成比である。そのため、紙・パルプ分野でのパルプ繊維のリサイクルやカスケード利用のための技術開発は木材資源の省資源化、延いては環境保全とバランスの取れた林産技術につながる。
パルプ繊維をカスケード利用する形態の一つが、微細繊維である。近年では、微細繊維の一種である幅100nm以下のセルロースナノファイバーに注目が集まっており、これまでの紙・板紙の用途にはなかった医療、食品、化粧品、工業製品等々、多様な用途への研究開発が盛んに行われている。
微細繊維は、パルプ繊維を微細化することによって得られるが、パルプ繊維の幅は数十㎛であり、物理的な解繊の場合には約20nm幅にまで微細化することができる。従って、微細繊維は幅数㎛~20nmまでの異なる幅の繊維が混在しており、さらにフィブリル化(毛羽立ち)が著しく進行するため、その形態はパルプ繊維のそれよりもはるかに複雑である。この微細繊維のサイズ分布や形態が定量的に評価できるようになれば、より効果的な微細繊維の調製法や活用法が開発される可能性が大きく高まる。そのため、1000倍程度の幅分布を持つ微細繊維の形態を定量的に評価する方法の開発が非常に重要である。
中間報告時点での成果と今後期待される効果等
2024年度はマルチスケールで混在する微細繊維の全景を捉えた高分解能・高範囲の透過型電子顕微鏡画像の取得に成功した。
これにより、これまでは間接的、部分的な情報しか得られなかった微細繊維の形態、サイズ分布に対して、直接的な情報を得られる可能性を示し、パルプ繊維のカスケード利用および紙、板紙分野の有用な知見の提供につながることが期待される。
※本文は、2024年4月の中間報告時点のものです。
訪問レポート
・紙パルプにおける微細繊維のマルチスケールの分布や形態が定量的に評価できる様になると、より広範囲な産業領域での利用が期待され、環境にも優しく、強くて軽い素材を生み出すことができるものと期待した。
・研究目標の第一ステップが達成され、取得された微細繊維画像からAi等を活用した画像分析が迅速、安価できるようになれば、素材としての評価方法も確立でき、用途に応じた製造コストと微細化スケールで最適な素材を産業界に提供できると感じた。
・財団としても助成活動を通じて、引き続き本研究テーマの推進に助力したい。
ー様々な産業分野での採用が可能だと思いますが、どのぐらいのサイズが適当ですか。
小瀬さん:数十ナノレベルにするには産業的にはコストがかかるので、数百ナノレベルの領域の方が製紙分野で利用されている微細化機器での利用ができることもあり、量産性を考えると良いのでないかと思う。
ー古紙を素材として利用することはできないのでしょうか。
小瀬さん:古紙は紙以外の用途だと不純物を除去しなくてはならないので、可能であるが費用を要するため、それ以外での利用は難しのではないと思う。