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助成活動事例「茨城大学 望月佑哉氏ー植物群落内への局所エアー処理と二酸化炭素施用を組合せた夏秋イチゴの収量増大技術の確立」

 研究情報 
    • 助成テーマ:農林水産業における革新的・先進的技術に関する研究【2022年度】
    • 研究題目:植物群落内への局所エアー処理と二酸化炭素施用を組合せた夏秋イチゴの収量増大技術の確立
    • 代表者名:望月佑哉
  • 代表者所属:茨城大学農学部

 

 

研究の意義


急速な高齢化や生活習慣病の増加が課題となる日本では、 機能性農産物を日常的に摂取することが、疾病リスクの低減や健康の維持・増進につながると期待されている。イチゴにはポリフェノールの一種であるアントシアニンが多く含まれており、様々な加工品をはじめ、生食でも総じて優れた食味を有しており日常摂取が可能である。さらに若者を中心に「果物離れ」が進み、多くの主要果実では生産量が年々減少し、イチゴも生産量および栽培面積は年々減少傾向にある。不足分は冷凍果実や低品質の輸入生鮮果に頼っているのが現状である。一方、イチゴは前述の通り優れた食味と容易に食べられる手軽さから若者にも人気が高い。以上から、市場では高品質で新鮮な国産果実の供給が求められる。本研究により、端境期である6-10月に四季成り性イチゴを安定生産することができれば、新たなイチゴの作型(11月~5月は一季成り性、6月~10月は四季成り性)確立が期待でき、 安全かつ高品質な国産イチゴを周年生産することが可能になる。将来は現在の平均単位面積当たり収量の3倍を見込み、産業としての施設園芸の発展にも寄与できる。従って、本研究により温暖地域での四季成り性イチゴの安定生産技術が確立できれば、現在では北海道南地域のみ可能であるイチゴの周年生産体系が確立でき、飛躍的に単位面積当たり収量の増大が期待できる。

 

 

 

 

中間報告時点での成果と今後期待される効果等


2022年度は当初予定していた計画よりもデータを多く収集することができた。また、年度末には英語論文を作成し現在投稿中(The Horticulture Journal誌)である。2023年度は計画をさらに進行させ、より収量性を高めるためのチャレンジングな研究に取り組みたいと考える。すなわち、2022年度に実施したAir 処理区は地上部環境の改善を目的としたものであったが、2023年度はAir施用を培地内へ行うものである。養液栽培は基本的に排液率を30%になるように潅水するため、培地は液相が多い。そこにAir処理を行うことで気過熱を利用し根圏温度の低下を狙う。また、根周辺に酸素が供給されるため、根の活性が向上し、養水分の吸収が高まるのではないかと考えている。

 

2023年4月14日にイチゴ苗を定植した。栽培管理は2022年度と同様に行う予定である。調査項目は2022年度と同様の地上部特性に加えて、根の活性をTTC還元法または酸素電極法により測定する。2022年度の結果は、投稿論文としては2023年度中の採択を目指し、学会発表としては2023年8月に開催されるアジア国際園芸学会(AHC2023)で発表する(すでに要旨は採択済みである)。

 

※本文は、2023年4月の中間報告時点のものです。

 

 

訪問レポート


ー本研究に取り組まれたきっかけなどありましたら、教えてください。

望月さん:博士研究員時代に取り組んだ大規模施設園芸拠点で初めて四季成り性イチゴの栽培に携わり、栽培面積や研究知見が少ないことに驚き、自分の手で栽培研究に取り組み問題点を解決したいと考えたため。

ー何種類のいちごを育てているのですか?

望月さん:今別の試験もしているが、冬のいちごで12~3種類ぐらいある。CO₂を与えた時に品種によって収量や反応性が変わってくるため、その点を考慮して栽培・実証している。今後は、光の当て方や波長の違いで、CO₂をどのように効率的に吸収させることができるか研究していく予定。

ー活動状況はいかがですか?

望月さん:助成1年目は、栽培が順調に進み想定以上のデータを取ることができ、論文執筆を行った。昨年は平均気温が高く栽培の難しさもあったが、それらのデータを蓄積することで、AirとCO₂を併用しながら収量性を改善していく技術を発信していけるようになったのは大きな成果だったように思う。今年以降も気化熱の活用方法を発展させる等、新たな方法に挑戦していく。

 

 

 

 

 

助成期間中の成果物


論文タイトル ジャーナル名 ジャーナルリンク 学会発表
Effects of Air and CO₂ Application within a Strawberry Plant Canopy on Fruit Yield and Dry Matter Production during Summer and Autumn Culture Japanese Society for Horticultural Science Webサイト アジア国際園芸学会

AHC2023Poster