助成活動事例 採択者訪問「千葉大学・千葉大学大学院・東京大学大学院」
千葉大学 彦坂晶子氏
小川氏研究題目「植物工場を活用した食用タンパク質生産法の検討」

▲千葉大学 小川氏研究室
彦坂氏研究題目「紫外線(UV-B)による植物工場野菜の高機能化と青色光によるDNA修復技術の開発」

▲千葉大学 彦坂氏研究室


▲東京大学大学院 小松氏研究室
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助成テーマ:農林水産業における革新的・先進的技術に関する研究【2024年度】
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研究題目:植物工場を活用した食用タンパク質生産法の検討
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代表者名:小川幸春
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代表者所属:千葉大学大学院 園芸学研究院
研究の意義
本研究は、『草本類の幼苗(スプラウト)』から『食肉類似組織』を直接創成するためのコンセプト確立、およびその実現方法を具体化するための独創性・チャレンジ性のある課題である。動物性食料資源の生産が抱える諸問題の解決法として昆虫食や培養肉、豆類種子の利用など様々なアプローチが試行されてはいるが、いずれも一長一短の状況が続いている。本課題ではそれらの解決策として『植物工場で生産する安全・高効率な草本類植物を、食肉類似組織に直接変換するための具体的な手段』を検討する。食肉は草食動物の筋肉組織であり、元をたどれば食餌である草本類植物の含有タンパク質である。したがって、植物からタンパク質を適切に抽出して模擬的に食肉組織として再構成できれば、動物を経由せずに直接食肉資源を創出しうる。動物を経ずに食肉資源を生産できるようになれば、現在の畜産業に起因するすべての問題解決が期待できる。本研究は、植物工場の適用分野拡大とともに、食肉生産にかかわるこれまでの学術体系や方向性を大きく転換させる意義を有する。
中間報告時点での成果と今後期待される効果等
本研究では、タンパク質含有量が向上し、かつ生育期間(生育サイクル)の短縮も可能で、より生産コストや環境負荷が低くなる草本類幼苗(スプラウト)の栽培・生産手段の探索を目指している。特にマメ科植物のスプラウトに対しては、窒素固定が可能な根粒菌を保持する根茎を残したまま茎葉部の刈り取り後再生力を向上させる最適栽培条件の特定を目指す。以上の検討課題に基づき下記の項目を今後の実施計画とする。
1)アルファルファ、ブロッコリー以外の植物種のスプラウトタンパク質の含有量、アミノ酸組成の調査
2)種々のタンパク質抽出法によって得られたスプラウト含有タンパク質の特性解析、アミノ酸プロファイルの調査
3)スプラウトから抽出されたタンパク質の模造肉原料としての加工適性の調査
訪問レポート
プロテインクライシス(タンパク質不足問題)への1つの解決策
世界的にタンパク質が不足する問題が認識されている。
この問題への対応策として昆虫食や培養肉という代替タンパク源の導入が進んでいるが、
本研究もこの問題解決の1つになると考えられる。
-食用に向かない植物での、タンパク質の生成可能性はありますか?
小川氏:樹木系の種や苗は使える可能性がある。
フードプリンター技術との連携
スプラウトから抽出したタンパク質をフードプリンターで活用し、
お肉の模造品を作り出すことが技術的に可能な状況である。
実際の食肉代替品製造への応用が現実的なレベルに到達している。
-製品化される可能性はありますか?
小川氏:スプラウトのタンパク質を粉末やゲル状にして、
タンパク質源として利用することにより、広く応用ができると考える。
